莫大小昔話。

最近タグが雑談ばっかりでなんのためにもならないブログになりつつあるけど、今日も今日とて昔のことを思い出したので、書き記して記憶の供養とする。


莫大小な僕らはその昔、それはそれはいい加減な受発注スタイルだった。商品名と数量を『喋った』ら発注で、発注書は事後だった。そしてその『喋った』タイミングで生産仕掛けないと、発注書を貰った時点では120%納期遅れだ。


今ではにわかに信じられないような状況だが、まぁなんというか、割と常だった。ある種の信頼関係で成立していた部分もあり、基本的にその『口約束』は守られていた。

だがいつでもセコい奴らはいるもので、それこそ『言った言わない』を逆手にとり、契約反故(そもそも契約とはいえない)もできた訳で、そういうクセが悪い人は、自然とサプライヤーが離れていった。だから人を見て信用に足るかを先に察知する嗅覚とか、そういう防衛本能みたいなのも経験値を積んで身についていった。

逆に商売が付いてきてサプライヤーからも信頼が厚いみたいなのが、『スゲー売る奴』で人格者でもあった。だから基本的にはカッコ悪いから、セコいことなんてする奴そんなにいなかった。気がする。


だが当然、このような曖昧な部分が起点になり、クレームというのは多発した。

世はガチャ万の余韻色濃く、まだまだ危機感のないヌルい層でどっぷりの癒着世代。僕はその地獄の海に飛び込んだのだ。だって知らんかったんだもん。


とある生地問屋から、そこそこの物量の注文を貰った。それこそ口頭で。

ただ、その口頭での発注も曖昧で、色ごとのバランスが不明瞭だった。しかし先染の商品だったので、その内訳がハッキリしていないと生産できない。できる訳ない。先に糸を染めてから編むんだから、そのバランスがないと、後から「あ、やっぱこっち増やして」とか無理だもの。


でもその問屋の客は、『喋って』あるから注文は通ったと思ってる。僕からその問屋に再三アソート組みの指示が欲しい旨連絡してようやく2週間後くらいに振り分けが決まった。僕はそこから動き出す。がしかし、問屋の客は二週間前に発注済みの腹づもりだ、だから納期がズレるなんて考えてない。

そして納期を再報告した際に、なぜか僕は既に納期遅れした業者になっていた。

問屋の客は問屋に詰め寄り、「なんで二週間もズレるんだ!納品遅れたら売り上げ保障してもらうからな!」と怒鳴られたらしく、メソメソしながら僕のところへ来て「納期をなんとかして欲しい」と懇願するのだ。

僕としては、できる限りの対応はしてあげたいんだけど、物理的にできることとできない事があるので、確約は難しい旨を説明してお引き取り願ったのだが、その日のうちに、その問屋の営業は上司を引き連れて再来社した。

その問屋の上司は「山本さん、僕ら仲間じゃないですか、助け合いましょうよ。このままだと1200万くらいのクレームになっちゃいますよ。」と言うのである。知らんがな。事の顛末を説明した上で、できる限りの協力はするが、クレームを受ける筋合いはない。とハッキリ申し上げた。そしたらその問屋の上司、僕の上司を出せと言う。(いや変わらんぞ、マジで笑)と思いながらもしぶしぶ上司を呼んだら「山本がそう言うなら、そうにしかなりません」と言い放ってくれた(マジ惚れる)のでその問屋の上司と担当共々その場はお引き取りいただいた。


ちなみにかっこいい僕の元上司はこの人。

紆余曲折あったが、二週間の謂れなき納期遅れ分を取り返し、物はなんとか納まり、無事クレームを受けずに済んだのだが、その問屋の担当は心を病んで業界を離れてしまった。

後日その問屋上司が美味いお菓子を持って詫びを入れに来たが、それ以降僕は彼の顔を見ていない。いや、正確に言うと、見かけたことはある気がするけど、眼中に入ってこない。


今もこの『喋った』ら走る文化は残っている。正式な書面で契約締結してから進行するのは、僕らレベルのサプライヤーでは逆に少ないかもしれない。でもこのグレーゾーンを活かして機動力があるのも事実としてはある。だから実際に金額的なクレームが起きたときは、仕入先に全投げせず、基本的には自分の腹に納めて次へ進むのだ。全投げしたら工場潰れるからね。そりゃ儲からんわけだ。


とはいえ、そんな人たちで回っている世界でもある。



まじウケる。

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