丸編み生地を教えてと言われて。
『産地の学校-東京校-』という場所で講義のオファーをもらって何度かカットソーの講義をさせてもらっている僕。お口があまりよろしくないので、こんなので良いのか?と毎回反省しつつ、言葉遣いに意識が行きすぎても伝えられない(ここはスキルを磨けていない自分の責任でもあるので申し訳ない)可能性が高いので、いつも普段と変わらない状態で喋らせてもらっている。
おそらく同校に集う受講生の方々は、概ね、生地がどうやって出来るのか?というところに興味を持って受講されているはずだ。
なので本来であれば、僕も生地がどうやって作られていくかというところに的を絞って講義資料を作っていかなければならない(実際そのような内容の依頼)のだが、資料を作っていると、テクニカルなことをロジカルに書いていたはずが、いつの間にか工場とのエモーショナルな話になってしまっている。そして、「丸編み生地を時間内に教える無理だ」という結論にたどり着く。
これももしかしたら、そういう教え方が出来る人はいるのかもしれない。僕の力量不足の問題で、生地作りをわかりやすく伝えることができていないだけの可能性は非常に高い。
とはいえ、出来ないことを無理やり本番にぶつけても、出来っこないので、挨拶も早々に、冒頭から「この時間内に生地を覚えてもらうことは無理です」って今回は言ってしまった。もちろん全く触れない訳ではない。基本的な概念や構造、代表的な組織や、よく起こる問題に対する意識などは盛り込んだ。
でも、やっぱりより深く生地を教えて欲しかったという声は、無くはない。たぶん、僕の感覚的に。
そりゃそうだ。目的がそこの人からしたら、今回の僕の講義はあまり意味を感じてもらえなかったかもしれない。
そこについて今回少し触れておく。
これは僕の意地もあるけど、実体験でもあるから、少しだけ耳を傾けてもらえたら嬉しい。
僕がこの莫大小業界に入ったのは16年前のこと。
専門学校で丸編み生地の勉強がなかったから、正直言って、カットソー屋さんって何するところかわからないまま前の会社にアルバイトとして入った。
面接の時、上司から「ウチがどんな会社かわかるか?」と問われた時、普通に「わかりません」って言うくらい丸編みのことは知らなかった。(よく入れた)
前の会社は優しい人たち?ばかりだったので、「ウチは簡単に言うとTシャツの生地を作っているところなんだよ」と面接の時教えてくれた。
アルバイト期間もそれなりにあったし、なんなら、正式に試用期間になったころ和歌山の工場に行って現場研修した後も、天竺と裏毛は見分けがつくけど、フライスとスムースなんてよくわかってなかったし、組織図も書けなかった(生地屋で書ける人はほとんどいない)から、それぞれの編み組織の定義なんてわかる訳なかった。
(これから商売でこれを売ってメシ食っていかなければならないのに、知らないなんて無理ゲー。)と思った。だから貪るように知識を求めた。
最初は上司や先輩が、業務時間の隙間を縫って座学で教えてくれた。組織の大分類や染色の適正など、大雑把なことだ。ところが疑問に思い突っ込んで聞いてみると、曖昧な部分が多い。丸編みだと特にミラノリヴとポンチの違いとかは、よくある質問だけど明確な回答を出せない人が多い。
しかし幸運なことに、前の会社は丸編み生地の資料が死ぬほどあった。たぶん、無い物は無いくらいあった。
そこで、組織名ごとに適当に生地をピックアップしては、とりあえず解いてみた。一目一目が生地から外れていく様子や、抜けた後生地に残ったループの形、前後の糸の関係性など、とにかく全部やってみた。
なんども繰り返していく内に、その組織の構造がわかるようになってくる。それをベースに編み機などを見ながら工場の人に説明してもらうと、一発で理解できたりする。
そういう積み重ねを何年も繰り返してきた。それだけ時間をかけても、まだ完全に理解できていないなんて、ほんの数時間で伝えきれるはずがない。
または実際商売で、トラブルになった時、原因究明をしていくために、やはり生地を解いたり、編まれている糸の量を実際に全部解いて重さを測ってみたりした。そうすることで、工場が潔白である証明をすることもできる。
昨日も講義で話したけど、僕の母親が慣れていない生地を支給されて縫い上げたら店頭で伝線のクレームになり全量買い取らされた話は、何も縫製業に限った話ではない。
編みや染めが本当に原因だったかわからないグレーゾーンで、加工賃しかもらえていない工場に商品下代で買い取らされたら、赤字どころか、工場の規模によっては潰れてしまう。そういうヤバいクレームから工場を守るためにも、正確な知識は必要になってくる。
よく工場へ足を運び、実際に作業体験をして、どういうポイントでどういう事故が起こりやすいかなども体験しなければわからない。みるだけでも全然違う。
それを座学だけで学ぶのは限界がある。し、その座学でわかったような視点を持たれて現場に向かい合うと、おそらく、後から嫌な思いをするのは勉強してわかったような気になっている方である。
できれば、実際に生地を解いてみて、自分の目で確かめることで理解を深めていただきたい。
できれば、実務で実弾(お金)が絡んだ世界で本気で分析してみてほしい。
そうやって身に付く専門知識の方が必ず皆さんの力になる。
どのジャンルでもそうだけど、奥は深い。
丸編みって言っても、じゃあワインダーだけで食ってる人たちからしたら、そのコーンの角度がどんなで、どんなワックスだったらどんな原料に適していてなどなど、そのポイントポイントでプロがいる。だから一点詳しくなるよりは、包括的に学び、ある程度は現場を信じて任せていくというスタイルをオススメしている。
ただ、いきなりそのスタイルで工場と向かい合うって言っても、彼ら職人はなかなか新参者をスッと受け入れてくれない(からめんどくさいんだけど)ので、講義の内容は、やはり職人たちと良い関係を築くという点にどうしても力を入れてしまっているのである。
細かく組織別での知識は、この記事の関連タグ[textile make]を追ってもらうと、組織別などで解説しているのでぜひどうぞ。
粗いので加筆するかもしれないし、しないかもしれないので、希望があればtwitterなどから気楽に絡んでいただければ、丸編み生地のことに関して知っていればお答えさせてもらうかも。しないかも。
0コメント