情報源の企て。

日本国内で製造されているテキスタイルの多くは、輸入された糸で作られている。特に定番的な綿の生地や、ポリエステル長繊維など、価格対応を求められる生地糸(生成りの糸)のほとんどは輸入糸だ。

綿糸に至っては、原料を国産で賄うことは難しく、(無いことは無いが)ほぼ確実に輸入原料だ。紡績は国内加工だとしても、原料からフィニッシュまで純国産のテキスタイルの出会うことは一般流通している物を見ているウチはまず無いだろう。これが良いとか悪いとかっていう話では無い、むしろ、一般消費していく原料を生産している原産国が日本より安価に作れていることから、買う側のメリットとしては、輸入原料を使用した方が安いから良いに決まってる。


ただ、安い原料で安い生地だけ作っても、テキスタイルの面白みは無い。ひたすら消費されるだけの製造業は、その主役が日本のテキスタイルメーカーではないことは、もう10年くらい前にはハッキリとわかってたことだ。

そこでインポートの原糸(げんし)も、イタリアやスイスなど、ものづくりの『イメージが高い』糸を輸入して生地の差別化をはかるメーカーがいた。そして安価価格競争から一線を画す企画を打ち出しては、アパレルメーカーへ営業をかけたのである。これはこれで、喜んで買ってたアパレルも多いだろう。実際に大手問屋は、この手の仕掛けが上手い。実売で店頭消化率はどうであれ、アパレルメーカーの企画やバイヤーを説得させるのに、このものづくりの『イメージが高い』原糸はかなりの威力がその当時はあった。


これらの情報源は、資本力のある問屋なら、自分で海外へ行き合同展示会や、地場の川上の情報を集めたりして、大手商社と組んで国内へ輸入してくる。しかし、自分たちで海外へ行けない(もしくは行っても見極めることができない)零細の生地工場たちは、その大手商社から流れてくるほとんど守秘義務とも言えないモノポリー情報を垂らし込まれ、船に相乗りして原糸を輸入するスタイルだ。

つまりこの時点で、大手問屋の一次情報より遅れているので、完全なる二番煎じだ。そして企画スピードや商品展開の遅れで、商品企画して営業をかける際には、大手問屋の圧倒的後塵を拝するのである。

そして零細工場は「良いものを作ってるのになんで売れないのだろう?」の壁にぶつかるのである。流石である。拍手。


しかし、輸入シッパーで、原糸提案の情報源でもある大手商社はそんなことは関係ない。事前に大手問屋の手玉を教え、参画企業を募り、なるべく多くの契約を得て、現地で安く掴んだ玉を日本で高く捌く。以上、商売の基本に忠実なスキームだ。そこから先の零細工場が販売先から総スカンを食らっても、契約限月がきたら、現物引き取りを催促し、膨大な原糸を工場にデリバリーする。これで取りっぱぐれも、在庫負担もなくなる。真っ当な商売だ。


商社を悪だと思ったかもしれないが、これは情報だけで玉を掴んだ零細にも当然責任がある。最終的に契約書を交わしているのは、他でもない、零細工場自身なのである。潰しが効かない商品を買ったところで、他社との差別化どころか在庫に苦しむのだ。

もちろんチャレンジとして、新しい原糸を試すことは悪いことじゃない。しかし、まともな市場調査もしないで、人から聞いただけで「売れる」と思い込んだり、響が良いから売れるはずだと思うのは、これは如何ともしがたい。自業自得である。


海を超えて活躍するはずだった原糸たちに、なんの罪もないのに、『売れない』レッテルを貼られて見切られていく姿は、彼らに感情があったとしたら、とてもやりきれない気持ちだろう。

エシカルうたう前にそういう自分らの無駄をきちんと見つめ直していこうじゃないか。そのエシカルさえも商社の船に乗せられて輸入して、何がエシカルなのか見失う前に、意味を理解して自分たちのお客さんをちゃんと見て進んでいこう。一次情報はきちんと自分の手で掴んで、大手商社はその手伝いをさせるくらいのポジションに置いておくことをオススメする。


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