加工業における付加価値とは。

木曜の夕方から車を飛ばして、とある工業現場に赴き、金曜一日現場に張り付き作業を手伝いながら観察をしたので備忘録。

突発で現場に行くなんてのは基本的にネガティブな要因だったりするのでそこら辺はお察しいただければ幸い。わかるな?


組織改変で現場のトップに未経験者が就くことなんてそんなに珍しいことじゃないんだけど、とりあえず今回の現場はそういう現場で、やり方を変えて結果的に機能してないから僕が飛ぶことになったのは上述の通り。

時間が解決する問題なんだろうけど、時間がお金みたいなところもある製造加工業において、時間が解決してくれるのを待つほど今の世の中に余裕はない。というか、そういう感覚の、お仕事で勉強みたいなのは、新入社員にしか許されないし、顧客案件は学校の設問ではない。

これは僕も入隊初期に死ぬほど味わったので、無邪気なトライアンドエラーを許されない社会なんてポイズンと憤ったこともあるが、冷静に考えれば、依頼者はそれでコケられたらたまったもんじゃない。


とはいえ、お世話になっている皆さんが従事する現場で、彼らに幸せになってもらうのは僕らの喜びでもある。だからこそ、新任の現場トップの方とはしっかり話さねばと思い、朝礼前と終業後に少し腰を据えて話させてもらった。


彼曰く、彼の作る理論上のシステムが機能したら工業はうまくいくという。理論上は。


おそらく間違ってない。たぶん。


僕は少し、現場寄りの人間だったので、理論上うまくいくことを理論だけでやろうとする人に少なからず反感を持つ。でももう大人なので、ここで反論はしない。とりあえず話を聞く。


曰く、そのシステムが機能したら、付加価値向上につながるという。理論上は。


たぶん、超大枠で見れば、間違ってない。知らんけど。


ただ、僕は少し現場に寄った上で、物を買ってもらう経験もあるので、工業サイドの言う付加価値というやつに日々少なからず疑問がある。見た目は大人、中身は子供の逆コナンなのでここで口を開いてしまう。


では具体的に付加価値ってなんすかね?


曰く、材料を加工して形にすること。

そうだね、間違いない。


では具体的に付加価値を上げるのはどういうことなんすかね?


曰く、品質を上げること。らしい。

まぁ、そうか(´・_・`)


じゃ品質を上げるってどういうことなんすかね?


曰く、綺麗に作ること。だそうで。

ぉ、おぅ(´・_・`)


僕は少し現場にいて作業をやっていた人間なので、綺麗に作ることは正直当たり前に課されることだと思うし、なんならそんなもん、日々追求し実行しているのがプロの技術者集団であるものと考える。


少なくとも、従来通りに依頼がこなされていたら、突発で現場に行かざるをえない状況になっていないわけで、なぜこのような状況になっているか確認も含めて1日張り付いたわけだ。


というか、僕の考える受託製造加工業における「付加価値の向上」とは、そこではない。

顧客様が求める「品質」を、いかに短い時間軸で安定して提供できるか。そして、空いたリソースで受託件数をどれだけ増やせるか、だ。

時間がお金である以上、自己満足の「120点」をダラダラ作るより、求められる「100点」を最速で回す方が、ビジネスとしても、現場の利益としても圧倒的に価値が高いと思う。僕はね。


そう、そしてついに発見したのだ。目の前にボトルネックがあることを。知ってたけど。


機械がほとんどの工程を担う製造加工業であれば、彼の言う理論上のシステムは正解なのだろう。たぶん。ただ残念ながら、ここは繊維製造加工現場で、扱うものは日々変わり難易度もそれぞれ、かつ、扱っているのは機械ではなく人である。


成果物自体にクリエイティブさを求められる世界であれば、また別の答えもあるだろうし、「綺麗に作る」の定義も現場の力量によって高められる部分があると思う。それによって満たされる市場もあるだろう。

今問題提起しているのは、あくまでも受託製造加工業における付加価値の向上とは何か?という話である。正直、今までの現場だったら期限通り綺麗に作ってくれてたし全く問題がなく感謝しかない。それが崩れた原因は何か、という問答を遠回しにしていたが、理論上のシステムが機能しないことが彼の中の答えであったと受け止めた。


ではなぜ理論上のシステムが機能しないのか。

彼とはここまで議論できなかったが、1日現場に張り付いて、各セクションの現場の方々と作業を共にしながら会話を通じて見えたことがあった。

会話の切り出しは「今までと何が違いますかね?」だ。特に今のシステムを否定的な感情で聞いたわけではない。

現場作業の工員さんたちの意見をまとめると、セクションごとに渡される表の文字が小さいとか、作業完遂できなかった時の指示系統は悪くない言い訳まで書いてあるとか、そういう細かい部分も含めて「言うだけなら誰でもできるし簡単なのよ〜」だった。それ言っちゃ終わり案件だが、それ言っちゃうほどに現場の感情は新システムに対する変化を歓迎してない。

少なくとも現場の人たちは、そこまで言うなら自分でやってみろ状態になりつつある。


ここで意識高い系なら「変化を恐れて改革なし」と反論してくるだろう。きっと現場責任者に就いた彼もそう言うのだろう。だから時間が解決する問題かもしれないと僕も思う。


でも先述の通り、今目の前にあるのは紛れもなく有償の顧客案件で、納期も守られなければ困るので、システムに順応する時間を待つ余裕などない。かつ雇用主はその現場の垂直立ち上げを期待して彼を責任者に据えていると思われる。

なぜなら彼自身が雇用主に対して「やります、(現場に)やらせます」と公言し抜擢されたから。しかしこの時点で彼の目線から現場と感情的に対等ではないことがわかる。


おそらく、自身を現場に投じて各セクションの作業フォローをしながら、全体を見つつ問題点を炙り出す方法をとっていたらまた違ったかもしれない。雇用者もそんな現場のイメージで彼の言葉を信じたと思われる。


もちろん変化は必要だ。出来上がったものが発展していくには壊さなければいけない部分もある。その試行錯誤に対して否定することなど何もない。

大きく分けると、視覚的に間違いが起こりやすい管理表と、その管理表を作成するために現場に降りてこない責任者に対する負の感情が、システムが機能しないと嘆かれている原因と見た。要は、大きい会社ではよくある、仕事のための仕事をするために仕事を作って仕事をしていて結局何やってるかわからない状態なのだなと。


製造加工業において、段取りは超重要であるが、段取りを取る人間の段取りはもっと重要だと気付いた。というか、知ってた。長い夜になりそうだ。

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