丸編み生地製造の勉強-ゴム入りの生地-
先日、とあるOEMメーカーの営業から「お客さんからスパンテレコだけで商品作ってくれって言われたんだけど、大丈夫なのかな?」という質問というか、まぁ質問が、来た。弊社の生地ではない。
何が心配なのかわからないので、大丈夫とはどう言う状態のことを言うのか、皆目検討もつかなかったが、経験上起こりうる危険性を伝えた。
まず第一に思いつく危険性は、スパンテレコなら引っ張ったら跡がつく。
これは「ポリウレタン入りの生地だったらなんでもそうか?」と言うとそうでもない。染色前にプレセットと言う工程を経ている生地はだいたい大丈夫。このプレセットとは、ポリウレタンを熱処理して『半殺し』にすることで、染色時に生地幅が必要以上に縮むことを防ぐためだ。
この動画をみて欲しい。前半は熱処理をしてあるベア天竺だ。後半は熱処理をしていないポリウレタン入りの生地だ。
この現象が起こるということは、熱処理されてない生地だと、肘や膝が出るし、洗濯して絡まったあとぎゅーんと引っ張ると変形して戻りにくくなる危険性がある。身生地使用すると、洗い後に裾がヘロヘロになったりもするかもしれない。
熱処理されている生地なら、その危険は少ない。(ないわけではない)
スパンフライスやスパンテレコは丸仕上げ(両耳が、わ)なので、セット(仕上げ)温度を上げ切ることができないため、ほとんどの物が熱処理されていないと思ってもらって良い。
開反仕上げの場合はもしかしたら熱処理されてるやつなのかもしれない。
それと次に考えられる危険性は劣化。ポリウレタン繊維は他の繊維に比べて劣化しやすい。経年劣化はおよそ2-3年で起こる。
劣化するとどうなるか?
白化してポリウレタンだけ断裂して表面に出てくる。し、生地密度も劣化部分は粗くなる。
生ゴム素材(ポリウレタン混)はゴムの寿命が3年程度なので経年劣化で必ず密度割れが起こるんだけど、ここまで顕著なサンプルは過去に取れなかったから記念に残しておく。ベア天竺とかそういう類もだんだんとストレッチ性失われて最終的にはゴムが白化して表面化してくるから買い替えが必要。 pic.twitter.com/jG1CtDQDUm
— 山本 晴邦 (@HARUKUNI_Y) February 11, 2019
よく古いウィンドブレーカーのズボンのゴム紐がボコボコになってるやつとかは完全に劣化で、中で断裂が起こりボコボコになってる。
劣化すると、急に見た目が悪くなるので買い換えのサインでもある。僕は先日お気に入りのブルゾンが劣化したが、同じ物がもう作られていないので泣く泣く、劣化サンプルとしてとってある。(とってあるんかい)
これは熱処理してあろうがなかろうが関係ない。
生地試験をして破裂強度が悪いポリウレタン混の生地があったら、そのポリウレタンが既に劣化してる可能性がある。
ポリウレタンは生地になってから2-3年ではなくて、製造されてから2-3年が賞味期限だ、気をつけろ!(長井秀和風)
ざっとこんなところだが、ポリウレタン入りの生地は、どういう状態でポリウレタンが入っているか簡単に紹介する。
ベア天竺やベア◯◯と呼ばれる生地は、ポリウレタン繊維が生地組織を構成する主要の糸に対して生で引き添えられている。いわゆるプレーティング状態である。
ポリウレタン繊維がまんまの状態で使われてるので、引っ張ってみるとキラキラ光るやつがいたら、それがポリウレタン先輩だ。
スパンフライスやスパンテレコはCSY(コア スパン ヤーン)といって、糸の中心にポリウレタンが入っている糸をところどころ使って編まれている。このCSY状態なら劣化しても表面に出てくることは少ない。
その他、ストレッチ◯◯と書かれていてポリウレタンが混用率に含まれていて、その他にナイロンやポリエステルの表記もあればFTY(フィラメント ツイスト ヤーン)を使用している可能性が高い。
FTYはナイロンやポリエステル長繊維の糸にポリウレタンを巻きつけて作られている糸だ。表面にポリウレタンが出てるので、やっぱり劣化すると見た目は悪くなる。
ストレッチ性が高いからといっても、ポリウレタン入りの服を選ぶ時はこれらのリスクがあることもわかっておくと、数年後劣化しても諦めがつきやすくなる。
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