守るべき人たち。

日本製云々の話ばかりで恐縮だが、議論が活発なのは大歓迎なので、僕の意見をここに改めて残しておこうと思う。

古くからご覧いただいている皆様におかれましては「何度も聞いたわ」という内容ではあるが、まぁいいじゃん。


繊維製造における日本製比率の低下に歯止めが効かない理由は、僕より他の誰かがちゃんと調べて様々な論があるので割愛する。

割愛するんだけど、一般論として僕が実際に経験したのは、5年前に佐渡で繊維産業をやろうと佐渡市役所に伺い、市長殿と会談した時に言われた「繊維は賃金の低い国がやるもんだと思ってたよ」という一言に集約されるだろう。

市長殿の発言それ自体に悪意があるものではないのは承知の上で、日本の繊維産業従事者の皆様方にとっては、中指が天を突き刺す勢いで立つほど怒りの感情に触れる一言ではなかろうか。まぁその通りの現実ではあるが、当事者である僕も当然、気持ちの良い発言とは捉えられなかったけど、事業内容をご説明差し上げて繊維産業を佐渡島内へ持ち込むこと自体は非常に歓迎されたので一旦水に流して忘れたことにする。(忘れてない


忘れてないと言えば、大昔前職時代、和歌山の編み工場の工賃下請けから生機売り、染色加工後の生地売りを経て、いよいよ製品売り(製品売りとは服になった状態で売るいわゆるOEM)業態に僕自身が転身しつつある頃、右も左もわからないままに辿り着いた工場様が言い放った一言である。

Tシャツのサンプルを依頼して上がってきた物を検品してたら、検品してたらっていうかもう平置きした瞬間に一目瞭然だったんだけど、裾の二本針が蛇行していた。

裾の二本針とは写真参考↓

見にくいけど。

この写真のもバツンとまっすぐかと言われたらそうでもないけど、このレベルじゃないくらい蛇行してたのね。


そのことを工場様に伝えると「たかがTシャツくらいで・・・」と言われてしまった。

工賃交渉の手前の話である。提示単価も何もない、これから始めましょうねっていう段階だ。最初にTシャツのサンプル依頼したのは、ある意味お互いにお試し期間の始まりだよね的な空気の流れだ。


こちらも製品やり出しのあまちゃんだとナメられてたところはあると思う。繊維業界の洗礼は大体ナメられるところから始まる。それはもう、入隊直後から死ぬほど経験してきた。とは言えクオリティに出したらダメだろ。そしてダメなクオリティに対して指摘したら悪態で返すなんてもっとダメだろ。


思い返せば入隊直後は、編み立てするにも2反のオーダーが「こんなもん仕事ちゃう」と現場に通してもらえなかったり、投入糸の重量より多く編み上がった明細を不思議に思い問い合わせると「魔法でもかかってんじゃねぇの?」と言われたり、ボーダーのセットがボーイングしてても「こんなもん無地だろ」と言われたり、納期過ぎても「今やっとるで」を2ヶ月以上聞き続けて現場に凸ったら手もかけてくれてなかったり。

たくましく育っている繊維戦士諸君なら共感してもらえるような内容ばかりではなかろうか。

それもこれも解決するには真摯に受け止め、まずは自分の未熟さと向き合い、数量と金額と何かあれば飛んで行って顔をみせ作業を共にすることで、ようやく信頼できるチーム製造が出来上がった。

生地作りの現場でさえこれである。こっから服作るためのチーム製造のビルドアップをもう一回やるのかと、正直心折れかけたよね、あん時は。


でも依頼者の動き次第で現場の人たちの態度は変わるから、頑張って向き合うしかない。

とは言え残念ながら、変わらない現場もある。そういう現場は自然淘汰されているところもいくばくかはあるけれど、これは本当に繊維業界七不思議の一つで、そういうところに限ってしぶとく生き残ってたりする。

当人たちも決して悪意を持って繊維製造に従事しているわけじゃない。最初から悪いもの作ってやろうなんて確信犯いたらそれこそヤベー奴だし。ただただ、過去のトラウマだったり、惰性ともいうだろうか、面倒な客を相手にしたくない、なるべく自分たちのやりやすい方法で仕事をこなしたいという態度のあらわれもあるだろう。

で、仕事が手薄になると「なんかいい話ないの?」みたいなノリで雑な営業を方々にかけまくったりしてる。

ネット上で発信されてる工場運営者皆様に関してはそんなことないだろうけど。


安価な海外生産にシフトすることばかりが原因で、昨今の現状を招いているかと言われれば、僕の体験談としては、もちろんそういう側面もあるだろうけど、それ以外にもあるよね、と言わざるを得ない。

だからどうしても、世論を日本製を買わねばという流れに持っていこうとする感じには違和感を感じてしまうんだよね。守りたい人たちがいるのは間違いないし、守っていかなきゃ僕らも困るから。だからSADOBASE作ったってのもあるし。

今協力してくれてる弊社の製造チームになってくれている工場様方々は本当に良くしていただいている。こんなにありがたいことはない。

だから僕らは彼らを守っていくためにお仕事をたくさん依頼していかなければいけない。そのためにはお客様が求める内容に柔軟に対応していく必要がある。そのすり合わせのために濃密な日々をお互いに切磋琢磨しながら積み上げていくしかない。

ここを飛ばして、外野から「日本の繊維製造守る」という旗印それ自体が金になると嗅ぎつけてプラットフォーマーになろうとしたり、仮想敵捏造し感情煽りで書籍売ろうとすると大火傷する。というか、そこだけ切り取って金稼ごうとするやつなんか大火傷してしまえ。お前らに現場の何がわかるんだ。


絶対に守るという熱量のもと、買ってもらうための市場を作っていく努力をしている人たちがいる。それは僕も賛成。日本製を守ろうという動き自体を僕は全く否定しないし、なんなら僕らも公言しているわけじゃないけど実務上参加している。

でも金のことしか考えてないのに上辺で「日本製を守る」って言う人がいたりするからさ、間違いじゃないしそれが正義でもあるんだけど、そういうところが日本製の品を格下げしてたりもするから。そういうのいっぱい見てきたなって話。

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