工場売上目標の再現性。

工場を運営していく上で、売上目標が常に右肩上がりの状態を望むのは幻想である。

現状の経営資源の把握をした方がいいとよく言うのは、この幻想を語る経営者が多いから、まずは自社のキャパを知りましょうよという意味でもある。

「キャパ!?んなもんわかってるよ!!」とお叱りを受けそうだが、本当にそうだろうか?


ご覧の通り、生産キャパを超えても売上を上げる必要を訴えてくる経営者もいる。


僕も前職が工場だったため、編機一台辺りの稼ぎたい金額を把握していた。と、思っていた。

把握してたと思ったのは、経営者から「一日これくらいは電気代や人件費も含めて必要」と教えられたからであって、実際実費計算レベルで把握していた訳ではない。

そして、前職では毎年の営業会議にて売上高が昨対比で右肩上がりになるように予算設定をしていくことで会議がまとまる予定調和があった。だから僕もお客さんをリストアップして『絵に描いた餅』を毎年絵に描いていた。もう意味不明である。

果たして年度予算を達成することがあったかと言うと、できてる人もいた、できない人もいた。僕もできる年もあったし、できない年もあった。

営業の提案精度(成約率)やお客さんの好不調(定番商品の増減)も影響するので、一様に理由をまとめる事はできないが、いつも経営者からは「もっと売らんとアカンぞ!」と発破をかけられていた。


しかし、「もっと売る」とは?を、一旦落ち着いて考えてみたい。

工場営業の場合、

・まずは自社のキャパを埋めきることが優先されるのだろうか?

・それとも自社工場関係なく、営業利益がでるスタイルの方が良いのだろうか?


前職の経営者は数字も当然見てたと思うけど、やはり『工場の空き具合』はかなり気にしていたように感じる。だから売上がある程度あっても、工場が手隙になると頻繁に売りに行くよう指示が出ていた。

ところが先日、工場運営を始めて3年目という経営者の方とお話する機会があって、彼は受注が多すぎて自社ではまかないきれない分を外注しているが、自社内で完結している仕事の収支はトントンだと言っている。利益は外注分からしか出ていないということらしい。


例えば生地を編む工場の場合、1日にどんなに頑張っても10mしか編めない機械があったとして(本当はKg換算するがわかりやすくイメージするためm換算してみる)、その機械を10台常設しているとする。すると1日の最大生産量は100mということになる。

これを一週間で5日営業して500m、一ヶ月で2000m、一年で24,000mが年間の最大水揚げ量ということになる。

固定費が人件費¥1,000万/年、地代家賃¥300万/年、諸経費¥500万/年と仮定して、さっきの年間最大水揚げ量で割ると

¥1,800万÷24,000m=¥750/mが運営上必要な工賃ということになる。 ※あくまで例なので実態とは完全に異なる金額


じゃあ¥750/m出したら工場は回るのか?と言われたら、そうじゃない。それで毎日切らすことなく動き続けて初めて運営が回るので、多品種小ロットが普通になってきている昨今では、品番切り替えの度に生産の機会ロスが生まれる。

(余談だが、発注の遅れで納期がズレても販売機会ロスを訴えてくるクセの悪いメーカーに対して製造業の生産機会ロス訴えても良いのか?と、いつも思う。)

なので、年間の稼働率平均を計算して、固定費から割返したものが本来は必要な工賃ということになる。

年間の稼働率が80%なら¥750/m÷80%≒¥940/mと言った具合だ。これがベースになる。


で、この工賃で受けていれば大丈夫か?と言えばそういうわけではない。これはあくまでベースだ。

このベースを元に商品のクオリティで上乗せできる価値があればその分が『儲け』になるのだが、、、年間の生産量は決まっているので、この限界値を超えて右肩上がりに成長を続けていくとなると工賃価値を上げるか、生産を外注する必要が出てくる。価格価値を引き上げる事はそんなにすぐできる事じゃないし、世間相場もある。でも向き合うべき課題ではある。


前職時代、営業売上予算を決めるときに「年間予算を週単位で具体的に落とし込むクセをつけなさい」と後輩に伝えていた。

例えなので実際とは異なるが、会社の必要に迫られて年間1億円売りたいとすると、1億を12ヶ月で割れば835万/月売り上げれば達成できる。これを4週で割ると210万/週受注があれば達成できることになる。で、これをカットソー生地の単価を¥700/mと仮定したら、¥210万÷¥700/m=3,000m/週を受注したら良いことになる。

先ほどの仮想工場では、年間24,000mしか作れないので、週産500mだ、もうキャパオーバー。これで1億円は絵に描いた餅が成立する。


逆に言えば、自社のキャパを遊ばせても、利益が出る商売ができたら儲かるということ。

そういう価値の作り方ができるようになるために必要なことを考えて行動していこうぜっていうポエム。




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