市場の回答。

世の中の物価上昇は一般家庭に打撃を与えている。最近だと米が話題。

そもそも何で米高くなってるのか原因がよくわかってないので、これらを良いことか悪いことかを僕なんかが判断できる立場ではない。

生産者目線に立てば、市場価格が高くなることは収入が増える見込みになると、安易な考えなら想像できるので、それもそれなんではないかなとは思う。

一方消費者の立場なら、安いに越したことはないというのが本音だろう。


さて繊維産業においては、生産現場の方で全般的に明るい話題は少ない。冒頭の物価上昇に付随して牽引されている面もあるだろうが、SNS上では相変わらず、技術に対する価格の不釣り合いに不満の声が多くあがっているように感じられる。

あくまで、僕の目にうつる範囲の世界の話だ。


仮想空間で繰り広げられる現状への不満や怒りはもっともに見える一方で、現実の世界ではしっかり収益を上げている中小現場もある。

技術の研鑽や品質の向上は当然ベースにありながらも、そこのみを追求した付加価値訴求が市場に受け入れられるかと言われたら、歴史が全てを物語る通りだ。

ではうまくいく会社とそうではない会社の差はどこにあるのだろうか。これは本当に興味深い。


昔話をしてあの頃が良かったなんて言うつもりはないが、前職での経験は非常にこの手の学びが多かったので共有したい。


僕のことを知ってくれている人はよく知ってると思うけど、前職はそのカテゴリーにおいては割と長命企業で、産地であることも手伝ってか、なんか良さげって思ってもらいやすいイメージだった。

おそらくネットや初見で拾える情報だと、自社設備を活かした品質重視で独自性のある素材開発がウリで、海外に向けてもうんぬんかんぬん。一時期は大規模合同展にも出展していた頃に知り合った新規お取引の方々は少し値段高めな印象を持たれていたのではないだろうか。


アパレルメーカー様と直接商談することも多かったが、いざ成約となると売り先は案外、従来取引のある既存口座OEMメーカー様や繊維商社様だったりがほとんどだった。(これは与信管理面でも非常に重要)

そうなると当然、提案先に行っている営業と売り先に行っている営業が別ということもある。

社内連携ができていないと言われればそれまでだが、エンドユーザー直で提案かけている営業の動きを知らなければ、発注元のOEMメーカー担当が案件を処理する。(社内情報共有の重要性)

ある意味、これを逆手に取れば、エンドユーザーが分かってて、そこに向けて営業をかけている中間業者と組めば、社内で牌の取り合いに勝てる世界でもあった。(横取り、裏切り)

この動きを取ると後々社内で非常に険悪になる。当然だが。『もっと高く売れたのに』という叱責を伴いながら。


高く売れることは売り手(生産者)にとって正義なのは間違いない。その品質と単価設定に相手方が納得している場合はこれ以上ない良い取引になる。商いの基本である。

ただ材料費が高単価で固定された場合、実際に買い取る中間業者がエンドユーザーから納品単価を詰められてたらどうだろうか。

よくあるのは、依頼主が材料費をグリップしていて、OEMなど中間業者に「これで入るからよろしく。うちの掛け率は知ってるよね?」的な圧力。ないとは言わせない。原価のブレイクダウンリスト要提出な先があるのを、みんな知ってる。


中間業者の担当と仲良しだったりすると、エンドユーザーに向けて営業かけてる別担当の「御社の〇〇さん高いんだよね・・・」など愚痴をよく聞いたりしたものだ。内緒だよ。時効。


この場合、高単価で成約して双方ハッピーな取引に見えて、実は品質に対して納得の上合意しているわけではないというのがわかる。結局のところ、商品になって市場に出すにはこれくらいの価値だよねってところで抑えられるのが現実だ。

そうなると実際に買い取る中間業者はなるべく安く仕入れしたいのが本音だろう。

実際、総取引金額が伸びる先は、この辺の融通を利かせてうまいことハメていく先だったりする。

その傍で、高単価一本筋のスタイルを貫いている営業は客先が安定せずコロコロ変わってしまったりしなかったりラジバン


どちらも良い面がある。収益性の高さでいけば当然高単価一本筋スタイルの方が中身はよろしい。季節性もあるので凸凹するが、年間通してみればかなり良い結果になることも多いが、ハズレ年となれば目も当てられない。

一方値段を合わせていくスタイルの方が売上も工業製造面も安定する。そして忘れてはならないのは、これがあるから高単価スタイルも成立するという事実だ。


これが僕が前職在職時代に学んだ商工業のバランスである。

そして結局のところ、どれだけ唯一無二のクオリティと自負したところで、その価値を決めるのはお客様であるということ。

モノが素晴らしければ売れる世界もあれば、モノが素晴らしくても売れない世界がある。だから技術向上の付加価値が世間に馴染まないことを嘆く必要は全くない。それはこちらが決めることではないのだから。

その世界を目指すなら、そういう世界があるということを確認した上で、そちらへ向けてアクションするだけ。その世界が見当たらないのであれば、そもそもの需要がないと早々に切り替えていくだけである。


つまり商いを継続するということは、関係各位が取引において必要性を確認しており、双方納得しながらも内部留保を残すために折り合いをつける場面が多く、大義を掲げて邁進しつつも、それを支える地盤をしっかり固めるということではないかと、個人的に思う昼下がり。

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