若い力。
千駄ヶ谷に通うようになって20年経って、行き交う人々や街の様子はずいぶんとかわった。
弊社のあるビルの一階はハンバーガー屋だったし、二軒隣には品揃えがほとんど変化球の雑貨屋もあった。注文をメモしないため待っている人を不安にさせる唐揚げ弁当が秀逸な「ともちゃん」もなくなって、実は夫婦じゃなかった老カップルがやっていた若松屋もセブンイレブンになり、いざという時のボタンつけ糸を売っていた文華堂文具店も建物の解体が始まった(そこにはほぼ毎日食べていたファミチキを売っていたファミマ千駄ヶ谷二丁目柴崎店も入っていた)。弊社向かいの高層マンションはガソリンスタンドだったなんて今は誰も想像できないだろう。
時間とはいろいろなものを変えていく。
昨夜遅くに東北方面の縫製工場様から電話があった。工場長は僕より若い。
今朝も別の東北方面の縫製工場様から電話があった。前任者が70歳超えで引退した後に担当になってくれる人はなんと僕より15も年下らしい。
彼らと話していると、この繊維戦地に赴いたばかりの頃を思い出す。
お客様も仕入先様もみんな一回り上は軽くいっていた人たちがほとんどの中、恐る恐る←仕事をしていたあの頃を。
それぞれの工場担当から入電要件は、簡単にいうと営業であった。
先週くらいから僕以外の担当にも多くの工場様から仕事の依頼はないか?という旨の電話が多い。そういう時期だ。
まだまだ僕らより年上が多い現場の担当様たちの営業電話はほとんどが「現場が暇だからなんかくれ」って話だ。この手の話はもう慣れっこであり、申し訳ない気持ちもありつつ、依頼してみたら案件内容によっては簡単に弾かれてしまうのも知っている。それは仕方のないことだ。
でも若い彼らはちょっと違った。
休みの日に都会の街に出て、僕らのお客様の店へ行ってどういう商品をやっているか見てきた。とか、具体的に現場のどのあたりが空くから、全部の工程じゃなくてもその部分工程でも手伝える。とか。
何だろう、仕事したいっていう熱意みたいなのが行動になってる感じと言えばしっくりくるだろうか。
皆さんもご存知と思うが、繊維工業の現場はほとんどが都市郊外にある。墨田とかは結構特殊だと思う。
この地理的な面で、工場勤務の人たちは巷でファッションとはどんな感じなんだろうってのを日々肌で感じにくい環境だ。
依頼している商品がいくらで売り場に出ているかってのは、下げ札に値段が印字されているからわかるだろうけど、それをどういう人がどういう店で買っているかまで想像するのは結構難易度が高い。故に顧客の嗜好、傾向と対策が取りづらく、営業方針としては自社ストロングの推し一択になりがちだ。
相手がそのストロングを理解して適宜案件の振り分けをしてくれる人たちなら問題ないかもしれないが、逆にいえば、その点以外では頼りづらく、結果的に閑散期が明確にできてしまいやすい。
若い彼らはどうやら、それに気付いたようだ。
まずは相手を知ることをはじめ、どれくらいの領域まで自社ならカバーできるのかを把握した。
そしてボトルネックになっている工程以外のラインで手隙が出たら、他工場でお困りだったらその部分だけでもお手伝いできるという柔軟さも提示してきた。
会社がそれを許しているかどうかは別として、こちら側が受け取る印象は非常に良い。ただなんかくれより数万倍良い。なんかくれも、何もしないよりはいいけど、より良い。
経験則に基づく感覚なので人それぞれだとは思うが、服は売り場で実際に買って着てみた方がいい理由として、縫製や生地の品質に限らず、そのブランドや商品がなぜ市場を持っているか理解できる。またその金額で購入した一商品が量産している一つのソレと意味が違うことを現場の人が理解する意味合いは大きい。
また自社内のリソースを意固地になって縛り付けておくよりは、手隙部分があるならオープンにしたほうが色々と都合がいい時もある。もちろん手口を知られて足元をすくわれるリスクも伴うが、人を見て繋ぎ合わせていけたら、難しい案件に対応できたりと、非常に強みになる。
若い彼らの今後に大いに期待したい。
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