繊維の誤解。

前にも書いた気がしないでもないが、繊維の誤解は世の中に溢れている。


特に機能性。繊維にその力があるのか、それとも後から付与されたものなのか、製造中に偶発的に出来上がったものなのか、答えはそれぞれにあるのだけれど、結果その機能を訴求する際には公的機関での試験で数値的に証明されている必要がある。


数値的に証明されているから理論的にはその機能性が我々の生活に寄与して体感を伴うものだと、普通は考えられる。

先日もとある商談中に「この商品、接触冷感って書いてあるのに全然涼しくないよの〜」と他社製品の体感を伴わない訴求に憤慨されていらっしゃる方がおられた。

接触冷感の測定に関する詳しいことは試験やってる人の方が詳しいのでそちらに問い合わせしてもらうのがいいと思うけど、簡単に言うと、室温を一定にして熱もった棒を布に当てたら棒から何度熱が動いたかその瞬間時間の熱量を調べる、だった気がする。最大熱流束って言うらいし。

要は触った瞬間に手から布へどれくらい熱が動いたかってことで、その数値が大きいほど人は触った瞬間に冷たいと感じると考えられている。考えられている。一般的には。

つまり、その瞬間はヒヤッとするかもしれないけど、熱は動いたあと、熱源(ひと)が発熱を続ければ布もずっと暖かいままなので、涼しさキープが保証されているわけではない。


商標取ってるいかにも涼しそうな繊維名あるじゃん?なんとかルマックス。あれ、そもそも原料ベースだと涼しいとかの性能訴求は書いてないし、なんなら冬場はあったかい風のサーモラなんとかって名称に変えてそれっぽい顔して店に並んでたりする。

もちろん、繊維原料の開発レベルでは、理論上、空気層を作りやすくする方法で作られているので、効果効能としては、数値上評価できるラインにいる(これは涼しいとか暖かいを評価しているわけではなくあくまで繊維メーカーの性能訴求文面に関して)。でもそれって何もかも繊維自身が性能を発揮すると言うよりは、使用者にとっては名称から受け取る性能認識と使用環境に由来するので、体感を伴わないケースは多く見られる。


たまたま、竹繊維開発に関するお問い合わせをいただいてとある竹の布を販売されているホームページを拝見したんだけど、あれ結構やばい。竹なのに!みたいな入口からとろみとかソフトな風合いとか、そりゃそうだよ、レーヨンだもん。

詳しくはこのポストからの引ポスもご参照いただければ詳しくわかるかと。


竹をそのまま繊維利用している糸もあった気がするけど、それは麻混糸みたいな、ベースの原材料に茶色っぽいケンピ風のそれが一緒に入ってるやつ。100%で紡績するには繊維長が短すぎて糸にならないので、流通している竹100%繊維は木材パルプとして溶融し捻り出す、ユーカリ由来のテンセルと同じ、セルロース再生繊維。または、竹和紙を使った抄繊糸(紙を細く切って撚ったやつ、紙縒り)なので、竹なのにとろみ風合いとか言ってるのはほぼ確でレーヨン。

竹繊維そのものに罪はないんだけど、発見した販売サイトがやばすぎてちょっとビビった。黒く染めた色展開があるのに染料不使用とか無理すぎる。


最近は夏場のウール推しも結構根強いけど、あれ山登りする人がベースレイヤーに使ってて好評なところから、じゃ夏の一般衣料にもいけんじゃね?的なノリがなかったとは言わせない。吸湿性能は確かにある。羊は汗をかかないってのは最近Xの方から教えてもらって確信に変わったのは、吸湿≠汗を吸うではない。

湿度を適宜調整する役割を果たす機能はある。ただウール繊維の表面はスケールという鱗状の物に囲まれていてそれ自体は疎水性、つまり水を弾く。これは水分子の大きさに関わる話で、結局流れるような汗をかく夏場はむしろ布表面に水をそのまま浮かべてしまう可能性が高いので快適かどうかは個人的着用感からすると微妙なところ。

また吸湿性があるということは同時に吸着熱も高まるとのことなので、結論、夏は何着ても暑い。

ウールを夏場売りたい人たちの、大変なご苦労の上に最近定着しつつあるウールTシャツは、35℃を超える日本の夏に最適解となるかどうか、あとは着用者皆様の使用方法次第。


オーガニックコットンが肌にいいってのとかもね、たぶん、農薬使ってないからそうなんじゃね?理論的に、みたいな。スタートはそんなノリだったんじゃないかな。

商売だから、売りたいんだよね。わかる。それも否定できない。だからいいところをモリモリ伝えたい。これもわかる。悪意ないんだよ。

繊維の知識が一般認知レベルで満遍なく周知されてるわけじゃないし、販売者もサプライヤーから提案受けた内容の受け売りだから深く考えてない場合も多い。

そして何より、その性能訴求が体感を伴わなかったとしても、繊維自体に罪はない。

罪はいつだって、それを悪用する人間にあるのさ(ポエ

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