丸編み生地製造の勉強-天竺編-

ツイッタで告知した通り、生地の製造に関して技術的なシリーズを始めてみようと思う。

狙いとしては、デザイナー諸兄がイメージとする生地感を工業的にアプローチするために、どのような指示が必要とされるのかというところ。

果たして需要があるのかどうか、とりあえずやってみることにする。


まずはカットソー生地の基本、「天竺-てんじく-」から。

平編みとも言われ、一般的なTシャツの生地はほとんどこれである。


丸編生地は大分類すると、シングル編みとダブル編みの二種類で他はそれぞれの派生であり、天竺はシングル編みの源流である。


天竺の種類は糸の種類とゲージの種類の組み合わせでかなりの種類が作れるが、用途に応じてその選定が分かれてくる。

いわゆるTシャツ用途ならば、30番単糸(30/1)であれば28ゲージ、20番単糸(20/1)なら22か24ゲージなど、糸番手により適度な密度に編める機械を合わせていく「適番手適ゲージ」という基本形が存在する。

この基本形をベースに度詰(どづめ)とか度甘(ドアマ)とかで好みの密度にしていく。

度詰とは高密度にすることで、度甘とは逆に緩くすることである。

昨今では高密度素材が割と多いので、30/1なら32ゲージなどのハイゲージにかけることも多い。


アウター用途にガッチガチの生地を作りたい時は20/1を2本取り(引き揃えといい、20//2と表記する)して20ゲージにかけるとほとんど伸びない生地が出来上がる。

何に使えるかわからないけど、クッタクタの生地を作りたければ30/1なら14ゲージなどにかけたら縫えないかもしれないくらいのヤワヤワな生地になる。


天竺編みを構成している編み目はニードルループとシンカーループに分かれる。
ニードルループとはその名の通り、編針が作る編み目のこと。


シンカーループとは、↑画像のように針と針の間に板がある、この板をシンカーと呼ぶ。
↑ニードルループ(青)シンカーループ(赤)それぞれが役割を果たしてこのような編み目を作る。
例えば適番手適ゲージの生地見本に対して度詰にして欲しいと依頼すると、シンカーループはそのままでニードルループが小さく締まっていく。
こうすると生地を染めた後にシンカーループとの距離がある方が生地目が立って立体的に見えるので生地肉が厚く感じる。
番手に対してゲージをハイゲージにしていくだけだとニードルループとシンカーループに差が出来ないので、生地の表情としてはフラットな印象になる。

ここまでの話でもカットソーは意外と奥深いと思ってもらえたと思う。

生地を作ろうと思って職人と話をするときにいきなりこのようなシンカーループとか言うと、職人は頭でっかちな人たちの事があまり好きではないので知識をいきなりぶつけるのではなく、例えば「度詰の天竺を作りたいのだけど、伸びない生地ではなくてキックバックは残したいのでどうしたらいいか?」など質問形式で職人の反応を見ながら答え合わせをしていく感じで色々と試してもらいたい。

何より、そうやってディスカッションしながら作っていく生地が思い通りの上がりだった時、とてつもなく愛着がわくので。


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