三方よし

独立してからは周囲の人に「儲かるでしょ?」とよく言われます。

確かに、サラリーマン時代に比べて収入が下がるような選択をしたつもりはなかったので、それが一般に言う「儲かる」のであれば、以前よりはマシというレベルではある。

事業として利益が出ないなら会社として、経営者としては失格だろうし。

ただ、ファッション業界の構図をよく知っている方なら、生産業務が儲かるか?ということに対しては、必ずしもそうだとは言えないと理解してもらえるだろうと。

アパレル商品の原価率は一般アパレルであればおよそ20〜25%が相場になって久しい。


なので、巷で「ウチは原価50%です!」と言って小売流通までされている企業さんは、そもそも業界がその20〜25%の原価率だということが認知されているかどうかが問題なので、50%は本当にすごいんですよということが一般消費者に伝わってるかどうかは不確かである。


アパレル商品の原価率が20〜25%と言われると、お店で高い服買うのがバカらしくなってしまう。しかし今は割とこういうのが周知されているから、いよいよ服は売れない。


製造メーカーは、その20〜25%の中で、更に自分たちへ利益を残すように生地を作り、縫製をしていかなければならない。

そうすると、本当の原価はいったいいくらなんだ?って思う人たちも出てくると思う。

糸を作った人の利益、生地を編んだ人たちの利益、染めてくれる人たちの利益、縫製してくれてる人たちの利益。

全てを担保した上でアパレル商品の原価が成り立っていたらこんなに素晴らしいことはないだろう。

商品を作っていく上で、コスト設定は非常に重要である。

積み上げ算で原価が出来上がって、それに基づいて商品小売価格を決めるので当然である。

その積み上げ算に基づいて商品小売価格を決めたのに、後から値引き交渉を仕掛けてくる人たちがいる。


その値引き交渉を製造メーカーが各サプライヤーに対して分散して行う。

すると、それぞれの取り分であったはずの利益が圧縮されてしまい、結果、工場の人たちは儲からない。

僕は前職からこの仕組みにずっと疑問と責任を感じていた。


自身が仕掛けた消耗戦で体力を消費させてしまった事実もある。

実家が縫製工場だということもあるだろう。


だから、各サプライヤーが提示してきたコストをできる限り言い値で仕入するようにしていたし、今もそうしている。

すると、僕が思った以上に儲からないことがわかった。


思った以上に儲からないというか、場合によっては原価と売り値が同じこともある。

馬鹿である。

馬鹿だが、仕方ない。

この負の仕組みを変えていくためには、仕入先の皆さんが潰れてしまっては話にならないからである。

コストの圧縮をかけてくることが仕事になってしまっている残念な製造メーカーさんは、おそらく長くは続かない。


安く作ろうとすると品質的な歪みは避けられないからである。

すると、そのアパレルから服を買ってくれた一般のお客さんは粗悪品を高値で掴むことになる。

高くて悪いものをまた欲しいと思う人などいない。

綺麗事だと思われても、僕は着てくれる人が満足し、仕入先さん達もしっかり利益を残してもらって、三方よしの精神を貫いていきたい。


色々な角度から仕組みを変えていけるアプローチを検証するために、今日は今治へ向かう。

内容はまた追って記事にしていきたいと思う。

ulcloworks

ultimate/究極の clothing/衣服を works/創造する ulcloworks

0コメント

  • 1000 / 1000