利己で困る話。

中堅から大手どころは営業マンが多い。それぞれに数字のプレッシャーがあり、それぞれにノルマと戦っている。頭数が多ければ多いほど、商品販売出口の問題はつきまとう。


例題:

『生地問屋大手X(以下X)』は営業マンが多数おり、『エンドユーザーA社様(以下A社)』に対しての『Xの担当は〇さん(以下◯)で、『A社』から『製品OEM受託しているB社(以下B社)』の『Xの担当は△さん(以下△)』だった時、生地の発注元は『B社』であるが、発注すべき『X』の担当は『◯』か『△』か?


答えはどうだろうか。


大昔、大手繊維商社から大手アパレルメーカーに向けた提案で中堅生地問屋の商品が採択された。僕はその段階では全く無関係。大手繊維商社の営業担当は大手アパレルメーカーの担当から中堅生地問屋の担当を聞かされ、その担当から生地見積もりを受け取った。

大手アパレルメーカーに同商材を提案していたのはその担当で間違いないのだから、そいつから買えば済む話でなんの問題もなかった、その段階では。

でも見積もりはかなり高額で、どうもメーカーさんがやりたい下代にハマならそうだという。別に生地が高いことは悪いことじゃない。然るべき利益を取れる方が正解なので生地問屋さんは間違ってなかったんだけど、商社の担当も商売決めたいから値段交渉するのが常。しかし全く値段下がらずで、案件自体が暗礁に乗り上げかけていたところで商社の担当から僕に相談があった。


「この生地ってこんなに(値段)するもんですか?」


僕の所見では原価と見栄えを掛け合わせてもその価格価値があるとは思えなかったが、まぁ生地の値段を決めているのは生地問屋様なので、余計な口出しは無用。「生地屋さんがそう言うならそうなんじゃね?」って冷たくあしらった。

熱い商社の営業だったので粘りが強く、生地問屋さんへ「値段が合わないので相見積もりさせてもらってもいいか?」と言う断りを入れて承諾を得た上で、再度僕へ相談があった。

そこまで言うならと、背景を洗い、と、色々裏を取るのは結構業界内ではあるあるなのだけれど、ちょっと忙しくてめんどくさかったのもあって、僕の付き合いのあるその生地問屋様の別の営業に聞いてみた。


「御社のこの品番、おいくらですか?」


聞けば商社の担当がかまされている値段より300円ほど安い見積もりが出てきた。一応僕が間に入ってしまったので運動量ゼロだったけど100円だけ利鞘を頂戴しても先方からしたら200円も安く手に入る。

そのまま商社の担当に連絡「聞いてるやつより200円安く出せそうだわ」ってそりゃもう喜んでくれたのでそのまま発注入ってきた。

僕は運動量ゼロだったので発注書そのまま右左スルーパスで100円なんて美味しい商売になるはずだった。そこへアパレルメーカー生地問屋担当が割って入って来た。

「山本さんと同じ値段でやるんでこっちに発注ください!」

「いやあんたが相見積もり承諾出したんやで」と商社担当が言ってもその営業は引かず、結局半分ずつ担当することになった。いやいやいや、そんなんもう全部そっちでやれよ僕なんか挟まんと。そもそも見積もり強気すぎて発注取りこぼしたお前がアレだったんじゃね的な。

まぁそれなりに大口だったからね、気持ちはわかる。でも300円下げても利益取れる案件なら、もうちょい最初に相談に乗ってあげてたらこんなことにならなかったじゃん。


そのアパレルメーカーを担当していた生地問屋の営業さんは後日繊維業界から消息を絶った。うける。


このケースでは例題に対する答えは途中いろいろあった結果、◯と△両方だった。なんとも締まりの悪い。


商売って難しい。高くてもお前から買いたいって言わせるほどの魅力的な営業マンもいれば、商品に魅力があろうがなかろうが商流に守られてるだけで自分は売り上げ取れてると勘違いするポンコツ営業マンもいる。


原材料やエネルギー調達コストの上昇の煽りがいよいよ激しくなってきて、どうも生地代は今まで以上の値上げになりそうである。そんな中、「しゃーないやん文句言うなよ」ってスタンスのルートセールスマンか、「それでもお前から買いたい」って言わせるほどの対顧客価値を生み出せる営業マンか、生地問屋さんの担当さんの力量が問われるタイミングが来ているような気がする。


だいぶ話それたけど。

いずれにせよ、取扱商品が魅力的かどうかってのも大事だし、そこに掛け合わせて顧客を大切にする想いが乗っからないと、利己的で環境要因ばかりを言い訳にしているぶら下がり仕入先一同は淘汰されてしまう可能性が高いので、今からでも利他を意識して人生の終わりに向けて徳を積んでいくのも悪くないと思うよってなんの話。

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