ミラノリブとポンチ。

正直言って、それがどっちだろうと、着る人にとってはさほど大した差はない。そして、素材関係者も、この両者の違いを理解している人は、あんまりいない。

ただ、この組織でボーダーやりたいよってなった時、生地製造依頼する指示者は構造を理解していないと結構厄介だ。


ちょっと編み物知ってるよって人は、目数という言葉を理解していると思う。

そのままだが、編み目の数だ。それが縦目の場合はコース、横目の場合はウェールと言う。そして編み物知ってるよって人は、それは常識だよそれくらいわかるよといった具合だと思う。


普通に生地生産の仕事してて、そのポジションによるが、ボーダーというシマシマを作る依頼をもらう時、普通はcmでピッチの指示がくると思う。そしてそのcmに対して編み目数をいくつはめ込んだら依頼に近いピッチを作ることができるのかというのが生地を作る人たちの仕事だ。

随分と前から、僕らがボーダーの指示を受け取る時は、相手がアパレルメーカーだろうが、テキスタイルコンバーターだろうが、ほとんどがcmの指示でくる。それに対して目数を当て込むから多少増減が出る。これは概ね理解してもらえる。が、ちょっと編み物知ってるよって人は、このボーダーピッチの指示を目数でやってきたりする場合がある。これはかなり厄介になる。


「なに、簡単さ、指定したいピッチの大きさに当てはめて、編み地の目数を当て込めば良いんだろう」

まぁそうなんだけど、そうじゃない。

この考え方は天竺とフライスとテレコと裏毛ならそれで、まぁほぼ良い。でも、カノコとスムースとミラノリブとポンチはそれでは全然ダメ。

カノコは4段完成だし、スムースは一本一本ではストライプになったりする。ただこの二つはそもそも編み目が縦横綺麗にそろってないから、そもそも編み目で指示するのが結構厄介なので、もう現場にcmで指示しがち。それはそれで良い。

でもミラノリブとポンチは、縦横綺麗に目が並んでるし、組織の雰囲気もフライスとかに近いからなんか目数拾ったらプロっぽい指示ができそうな気がする。そこが落とし穴だ。


わかってる、既に誰もついてきていないことを。しかし押し通す。


ミラノリブは簡単に説明すると、ダブル編みで、1コースが天竺表面、1コースが天竺裏面、そして1コースがそれぞれを繋ぐフライスでできている。3コースで見た目は2目の組織が出来上がる。

ポンチは簡単に説明すると、ダブル編みで、1コースが天竺表面、1コースが天竺裏面、そして1コースがフライスでそれぞれを間飛ばしでつないでて、そしてもう1コースのフライスで間飛ばしの隙間をつないでいく。4コースで見た目が2目の組織が出来上がる。


ご覧の通り、組織がどうなっているか理解せずに編み地の目数だけ拾って指示すると、ミラノリブの場合は2/3のピッチ、ポンチの場合は1/2のピッチに仕上がってしまう。なのでミラノリブとポンチの組織はそれぞれをしっかり理解してからコース指定するのが良い。

こんなこと、編み工場さんがやれば良いから関係ないって思われそうだし、需要ない知識だろうからわざわざ書かんでもいいって言われそうだけど、事故った後になんで事故ったのかを調べると、指示者が組織理解してなかったからってことは良くある話なので。


ちなみにミラノリブとポンチ、ゲージと番手がそろってたら見た目はほとんど一緒。ただミラノリブの方がポンチに比べて伸びやすさはある。あと厳密に言うと針の出合いが違うから、ミラノリブはフライスの親戚で、ポンチはスムースの親戚って言う説明を昔された記憶があるけど、生地見てもあんまわかんないし、それが出合いでどうこうって、多分知識需要ないから以下割愛。


なんせコース数に対して見た目に出来上がる目数が違ってくるってことがわかると、まずは一歩前進。見た目そっくりな厄介な組織のお話。

ulcloworks

ultimate/究極の clothing/衣服を works/創造する ulcloworks

0コメント

  • 1000 / 1000