酒は飲んでも飲まれるな。


先日、昔から公私共にお世話になっている業界の先輩と久々にお食事させていただいた。

彼とは色々と考え方の違いで意見がぶつかるところがあるが、それはお互いの意見を尊重した上で、双方にとって「なるほど、そういう考え方もあるよね」と、じゃどうしたらいいかって方向に議論が進みやすいので、話していて気持ちが良い。


今回の雑談の内容は、先輩の『日本製生地産地を行政主導で守るべき』という主張に対する、僕の反論というカタチがメインだったような気がする。

誤解を恐れずに概ねまとめると「自己責任論が強くなると、税金納めているのに救済されない人はどうなるのか」というところだったように思う。むしろアレか、僕の『自己責任論』の主張が強すぎたから、行政の責任でもあると反論を受けたのか。どっちでもいいけど。


冷静に考えてみても、税金を納めている金額に比例して自己責任で勝てる方法を探している人が多い気がするけどまぁそれは置いておこう。そういうところが自己責任論が強いと言われそうだから。

僕は別に行政批判も擁護もしない、あくまで現実はこうだからこうした方が良いんじゃね?という思いで、彼の行政批判に反論した。


たしか主張されていた行政主体で守るべき理由が、衣類の自給率に関わるとのことだった。

まぁ言いたいことはわかる。そしてこうも言いきっておられた。

「産業が工芸という立ち位置でも構わないから守るべきだ」と。工芸レベルで守られる産業だとしたら、あんな壮大な設備を維持するのにすんげぇ金かかるんじゃね?って普通に思うし、現場見たことないんだなって思わざるを得ない。だって仕事ないのに、従業員2-30人とかを雇いつつ、設備の維持費も保証するって、相当なお人好しなのではないかと。


「じゃ海外から供給が断たれたらどうすんの?」って言われたけど、仮に工芸レベルでも行政で守ったとして、海外から供給が断たれた時、国内産業に振り替えて依頼主が希望するコストで受けてくれる現場はないだろうし、そんなキャパもないだろう。値段も合わせてなんとか全て回そうと意気込む人がいたとしたら、とても素晴らしい気概だとは思うが、結局は根性論で、物理的に再現性があるかと言われたら相当厳しいと思われる。

「じゃお前は、淘汰されて全部なくなってしまって良いと思ってるんだな?」って言われたけど、そんなこと言ってないし、そう思ってたら過去から今にかけてこんな活動してない。


では、氏曰く、その行政が守るべき生地産地に目を向けてみようと思う。

縮小止まらないこの繊維業界において、理由を行政の責任にして、守られることが担保されてしまった場合、産地工業はどうなるか。そういう想像力が働くか。

今でもそうだが、補助金がなければ新規事業に打って出ることもためらうレベルの人たちが、行政に守られたら、余計に自発的に前に出てなんとか切り抜けようとする考え方になる人なんか出てこないんじゃないかとも思う。自ら勝ち筋を探す人がどれだけいるだろうか。っていうと、結局また「自己責任論がどうだこうだ」ってなって、仕舞いには「お前は政府のケツ嘗めしてる」とまで言われたけど、最初から行政のどうこうに関して賛同もしていなければ批判もしていない。まして、実際にそういう事実をずっと見てきたからこそ、行政に頼らずに自力でなんとかしてみようという人たちが増えるようにしていきたいと思ってる。全てを行政批判にしてしまっている意見に対しては、では逆に現場見ました?って言いたくなる。僕は行政が何したかは知らないけど、現場では何が起こってるかはわかる。

自発的に行動できない工業ばかりになってしまうという考えに対しては、またそれも行政の責任だと言われたら、僕は何も言えないし、「お前さ、じゃあ行政が今まで何してきたかわかるのか?わからないだろ?だったらそんなこと言うなよ!」と酒も進んで白熱してきた彼に怒号を飛ばされたが、だから行政に頼らずにどうしたら良いか考える方が良いじゃんって言ったら「お前が全て正しい」ってなっておさまったので今までなんだったの?という楽しい会だった。

ずっとそう言ってんじゃんw


行政がどうこうなんて今まで考えたこともなかった。なんで産地工業が先細ってしまうかってところに関しては僕は別の理由があると思ってた。

単純に、例えば今日起こったことで言えば、「サンプルと量産で色がブレました」と、それ自体は起こりうることなので全然驚かないのだが、そのブレを認識したのはこちら側が指摘をしたからで、自分ではブレていると思っていなかったから、ブレを指摘されたことに対して腹を立てるなどのクセがある。これはもう、そんな会社無いって言ってあげたいけど、ある。

日本製のモノヅクリが、守られるべきだとしたら、まずは自分たちが関わっているところに対する意識をもっと上げないと。悪意ではなく、事実としてお客さんから「これ違うじゃん」って言われてるレベルの人が、「そんなことない!」と腹を立てるのは、意味がわからんっすよ。大きい問題になる前に『違う』という事実に向き合って、それをどうやって解決して良いものにしていくかっていく前向きな話をしようとしている人に向かって、「そんなん言う人らとお付き合いできませんわ」って言ったらおかしなことになるでしょう。そういうところっすよ。


いろんな人がいて、いろんな意見があって、世の中は面白いね。

とりあえず、ワインは、水のように飲んでは(または飲ませては)いけないと学んだ日だった。

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