リスク。

ここ数年は商社様や問屋様が在庫を絞っているのでQRしにくくなった的な空気が漂っている。

確かに、カラーストック生地や紡績各社様ともオリジナル商品の在庫販売はやってないわけではないにせよ、潤沢に持っているかと言われれば、1件でもまともなオーダーが入ればサクッとなくなってしまう程度になっている感は否めない。裏を返せば、カットオーダーや一反くらいの小口オーダーがほとんどになっているということでもあるが。

実際ブランドやメーカー側も展示会受注でロスなくやろうとしたら、実際にはどれだけオーダーが付くかなんて蓋開けてみなきゃわからんわけで、それくらい先行き不透明な市場であるからして、材料段階のメーカー側も在庫を潤沢に揃えておくのはやめておこうマインドになるのは全く理解できる。


原材料及び生地在庫販売のことを俗に『リスクしてる』って言ったりするんだけど、会話の中で「最近リスク減ったよね」なんて感じで登場するので、業界新入生諸君はこの手の会話の流れで出てくる『リスク』は『即販売用在庫』と言う意味だと理解しておいて差し支えないと思われる。(他にも定番的なものだったりすると『ランニング{意:継続}』とかも言うからおぼえておくといいかも)

これは買い手側にとっては非常に便利なシステムだが、売り手側からすると売れ残ってしまえば運転資金圧迫につながり、不良在庫と化した物が多ければ多いほど会社が危なくなるリスクを伴う性質の商売スタイルだ。


誤解がないように先に言っておくと、おそらく大手繊維企業はチカラの入れ(金をかける)どころを変えているだけで決してリスクを取ってないわけではない。これらの会話でリスク取ってないと感じられているのは国内ファッションアパレル向けの在庫販売玉を絞っているという意味だ。


お客様からのご相談でも「最近〇〇さん在庫ないし、素材も他社と被っちゃうんでどこか在庫持ってて目新しいところないですか?」みたいな話もある、と、社内スタッフから聞いている。

まぁ、わかる。ちょっと変わった物欲しくても、在庫販売なら不特定多数の目に触れさせる必要があり、実需があれば在庫も厚くできるだろうが、ぶっちゃけ売れるかわからんけど1-2軒程度の引き合いなら、薄く在庫積んで小口で出ていく先に広く見せていくのが売り手としては定石なので、在庫あるから使いやすい商材はカブるし、在庫薄い商材はいざと言うとき欲しい数量がない現象は日常茶飯事だ。


だからなるべくメジャーどころじゃないリスク素材の要望は意外と多い。ここら辺に目をつけて完全別注対応から少しずつオリジナル企画素材を自社で在庫販売して健闘されているマイナーな素材メーカー様は、実はちょこちょこあったりする。

そこに目をつけて先んじて手を打ったから商才があったような背景もあるだろうが、一方でやむに止まれずそのスタイルになっている中小メーカー様もいらっしゃる。


やむに止まれぬ理由としては、問屋様のリスク商材狙いで大口受注していたが数量渋くなってきて工場稼働が悪いなどうしよう→じゃオリジナル作って自分らで前に出て売っていこうぜってのが多い。

または糸屋さんが糸在庫薄くしてるからオリジナルの糸企画して自分らで糸リスク張っちゃおう。でも糸じゃ売れんからそこから生機リスクしていこう→生機リスクだけだと認知なかなか取れないからカラー展開してブックにしてばら撒こう的な。

理由は従来の商売スタイルでは売上が減少傾向にある事実に対して、前向きに攻めている姿勢である。自分たちは生き残って勝つという強い意志とか覚悟みたいなのを感じる。

なので、ちょっと変わった商材で別注ロットをそこまで気にせずやりたいと言う方は、一度そんな感じの人たちをあたってみるといい。ウチでもいいけど。まぁ別にウチじゃなくても。


ただ、マイナーなだけに、一度リスクしてると聞いた程度では、未来永劫その原料が在庫されているとは限らない。なんなら半年に一回くらいは、コミニュケーション取りながらリスク商材の背景を気にしていくのが良いかと思われる。

あると思ってたらもうやってなかったあるあるは、大手もそうかもだけど、小規模ならなおさら、ソッと辞めてる場合も多い。やめる時のことわざわざお客さんに言わんのよね。義務はないから。


糸軸でリスク張ってる系のソッとやめてた場合、別注で対応できるかどうかの確認にはそれなりの数量に対する覚悟が必要だ。なぜならソッとやめてるわけだから、糸から別注でやりますってなると、紡績ロット全部被ってくれますか?って話になるから。そりゃ無理だよそんなの提案しないでよって怒っちゃダメだよ。怒っても時間遡ってリスクしてた時の提案した事実は消せないし今現在の紡績ロットも下がらんからね。その金銭的リスクを背負って勝負してたわけだから、売れなくなれば根元からやめていくのは健全な判断だからね。


一長一短はあるけれども、そんな感じの仕掛けをしてるマイナーな素材メーカー様はいらっしゃるので、素材からやっていこうって気概があるのであれば、そこら辺の方々と繋がって細かく会うなりの接触頻度上げながら実商売も少しずつ積み上げていくと、いい関係を築けて、そのうちいいことあるかもね。いずれにしても、みんなすごく頑張ってると思うよ。偉そうな感じじゃなくて。僕にはできないスタイルの商売なので。応援してる一方で、在庫過多でパタンってならないか少し心配もしてたりする今日この頃。

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