縄張り。

最近ちらほら、ブランドと工場が中間業者でバッティングする様子を見かけるようになった。

どういうことか。例え話で辿ってみたい。


あるブランドと中間業者Aは長いこと取引があり両社蜜月の仲だった。だったという過去形がミソだ。


ある頃から、ブランド側にとって、どうも中間業者Aの対応がしっくりこなくなっていた。それは単価なのか、クオリティなのか、担当の人柄なのか、理由は色々あるにせよ、なんせ取引を継続するにはバランスを失っていたので、なんかのタイミングで乗り換え先が現れないものかと模索を続けていた。

そこへ、ひょんなタイミングで中間業者Bを別の取引先から紹介された。中間業者Bは中間業者Aに比べ、単価なのか、クオリティなのか、担当の人柄なのか、まぁとにかくなんかしらが秀でていたため、ブランドは中間業者Bと取引を始めることにした。


日本国内の繊維業界は狭い。ブランドの嗜好とマッチする工場の数はそれほど多くはない。ましてカテゴリー(カットソーとかシャツとか)が限られるとなおさらだ。

それに対して、中間業者は割と多い。

ブランドは中間業者Bに対して仕事を依頼するようになった。中間業者Aはなんとなく仕事の減りを感じてはいたが、気のせいだということにしていた。ある日、中間業者Aが頼っている工場へ立ち寄ったら、その工場に中間業者Bから注文が入っていた。それは蜜月だったはずのブランドからの依頼だった。(...なぜウチじゃなく聞いたこともないBなんかに!!!)Aは憤った!「どういうことだ!」勢いに任せて中間業者Aはブランドへ速攻で電話した!「なんでBがウチの(協力外注)工場におたくの仕事を入れてるんだ!」しかしブランド側からしたら、それがどの工場で作成されているかなど、知る由もないので寝耳に水状態だ。

ブランドはとりあえず中間業者Aの怒りを鎮めるために、それとなくはぐらかした。

ブランドはその後、中間業者Bへ工場バッティングの経緯を説明。中間業者Bはとりあえず「わかりました」とだけ伝えた。


こういうことは多々ある。そして、もうお分かりかと思うが『だからなんだ?』という事態である。

この場合、工場はどこから依頼が来ても同じだし、もっと言えば、待遇の良い中間業者からであれば尚よしと言ったところ。ブランドも、工場がどこであれ、仕事は中間業者Bに依頼しただけである。中間業者Bは、中間業者Aと面識もなく、かつ、その工場をそのブランドの仕事で中間業者Aが頼っていたなんてことも知らない。

しかし中間業者Aは、どこの馬の骨か知らん中間業者Bにシマを荒らされたと考える。お客さんも、仕入先も両方イカれたと思う。これは冷静ではいられない。と、いう中間業者Aの気持ちもわからなくは、、、わからない。


商売は自由競争である。そして取引は紳士協定である。この場面で誰が悪いということはない。どこに対してもスジの通る話なので、中間業者Aに対して、誰かが特別のはからいをする必要もない。失って初めてお前の大切さがわかったよ、戻ってきておくれ〜なんていうのはお客様側から仕入先に対しては、この世界では結構あるけど、お客様に対して怠慢かましてる中間業者(または工場)にお客様が戻ってきてくれることはほとんどない。

失ったら怒らず、何が問題だったか冷静に考えて、まだ取引を続けてくれているお客様や、これから出会うかもしれない新規のお客様に向けて活かしていけばよいのである。そのやり場のない怒りのエネルギーを前に向かって使うんだ。

だってその怒りは誰にも向けられない、結局は自分に向かって発された怒りだ。

腐らず行けよ、行けばわかるさ。


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