繊維産地。

繊維産地の若手の声という記事を読んで、今も昔とそんなに環境が変わっていないことに少しも驚かなかった自分に驚いた。

何を隠そう(隠してない)、僕自身は前職が繊維産地の企業であり、絵に描いたような創業ファミリーの元、莫大小の世界を勉強させていただいた身である。

記事に書いてある通りの若手の不満の声は、入隊直後若かりし頃の僕の心の声、それは時として外部に大きなスピーカーを通して発していたそれと全く一緒で、まさか当時の自分の発言がこんなタイミングで文字起こしされたのかと思ったくらいだ。

誤解がないように記しておくと、前職一家とは超円満である。たぶん。


不完全な生き物である人間の成すことなので、昨今の厳しいコンプラ何某は少々縛りがきついなと感じることも少なからずあるのは本音。だからと言って人の心を傷つけるようなことを意図的に平然と行って良いかというとそれは違う。ただ、難しいのは受け手の感じ方なので、どれだけ相手の立場に立ったところで本人にはなれないからして、よもやそんなところが地雷原だったとはってことは誰しもあるはず。


記事によると若手の不満の内容としては給与待遇面と対人関係が主な要素っぽい。想像するに容易い。待遇が良くて対人関係も仕事上円滑に進められる程度の距離感であれば、当人たちは最高のパフォーマンスをもってその給与以上の稼ぎを会社にもたらしてくれるのか?というのが経営者視点での考えになるだろう。

被雇用者サイドの視点に立てば、頑張れる意味をそこ(給与)に見出したい気持ちも当然あるだろうし、プライベートも充実させたいだろうから仕事以上の深入りは避けてほしいとも思うだろう。

そもそも書いている僕の会社自体が、それらを満遍なくカバーして世に誇れる内容かどうかと問われたら、自分ではそうしているつもりでも、スタッフ皆が皆心からそう思ってくれているかはわからない。もちろん良い会社であるよう日々努力をしている。


記事に取り上げられた問題点の給与面の解決策として、すぐに思いつくのは収益の向上だけど、繊維産業全体的に縮小傾向の中、全体の企業がそれぞれに収益向上できる状態ではない。販路を国外に自力で持つにも一朝一夕にはできない。

また、産地といっても表立って名を馳せる会社だけではなく、それを下支えする工場も多い。その二次請け三次請けの工場の創業一家にモノづくりの信念が明確にあって世に技術ありと誇れるものがあるかと言うと、必ずしもそうではないこともある。ましてそれがファミリー企業なら尚更ワンマンルールでやり方を改善するなんて思考に至る方が難しい。

ガチャマン工業バブルでやれば城が建つ時代に出来上がった産地ならではの虚無感は、言葉にするのは難しい。行けばわかる。


そういう会社に対して給与面や対人関係の改善を求めるのは少し酷だなと同情さえする。残念だけど入るとこ間違えたねってことしか言えない。ただ逆に、なんでそうなっているのかという問題点に気付きを得たならば、ひっくり返すことも可能ではないかと。

そこまで胆力ないわぁって人に対して言うことではないので、鬱陶しいおっさんの独り言で片付けてもらって構わないんだけどね。

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